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好きな本を読んでのんびりできたら幸せ・・


by chicohiro

森に眠る魚

気になっていた「森に眠る魚」を読みました。

東京の文教地区の町で出会った5人の母親。
育児を通してしだいに心を許しあうが、いつしかその関係性は変容していた・・・。

何不自由なく育った、千花。
人間関係に躓き摂食障害になったことのある、瞳。
地味な学生時代をおくった、容子。
セレブな生活に憧れ郊外から引っ越してきた、繭子。
繭子と同じマンションに住み優雅な生活を送っている、かおり。

知り合った当初は、気楽な関係だったのに、「お受験」によって5人の関係は崩れていく・・。

「サスペンス・・というよりホラーなのか・・、これ?」
と背筋がゾワゾワしながら読んでいました。はっきりいって怖い・・。
でも途中で止められないのです・・。
5人の母親と子どもたちがどんな結末を迎えるのかが気になって一気に読んでしまいました。
じわじわと精神的に追い詰められていく母親たちの心情がかなりの迫力で描かれていますよっ!

いやー、怖かった。クライマックス(第6章あたりから)・・本当に女って怖い、でもって、面倒くさい

「お受験」はしないけれど同世代の子どもを持つ母としては、「わかりたくないけど、わかるかも・・」というドロドロした部分が描かれていて読後、どよーんとすることは間違いないです。

幼稚園やらなにやらって、母親同士気の合う合わないに関係なく、ある程度のお付き合いが必要な世界だと思います。そして、専業主婦ってやっぱり暇なので、学生時代のようなお友達づきあいに発展したりするわけです・・。
この小説の母たちもそういう付き合いに発展していくのですが・・、だんだんと価値観の違いとか性格の違いととか・・「一緒にいると疲れる」お付き合いになってしまう。
そこで距離をおくのか、我慢して付き合い続けるのか?
ライバル心メラメラなのに頼っていたり、このグループしか自分にはない!と思い込んでしまうのか、自分をがんじがらめにして、どんどんドツボにはまっていくのです(読んでいてイライラする~)
昔あったよな~、という「女子」の世界が展開されています。
いくつになっても、あるのか・・、こういう世界は。あぁ、女って・・。とため息が出てしまいます。
  
この5人、育った環境、年代、夫の職業もばらばら・・生活レベルも当然違うのですが・・女の習性なのか見得の張り合い・・。人は人、自分は自分・・とはなかなか割り切れない。
そして、その見得の張り合いも、専業主婦の5人は、自分自身の実力で勝負できず・・・
夫の収入や親の援助、自分の子どもの能力・・とか自分の力ではどうにもならない部分で張り合おうとする・・だから、自分の思い通りにならないことへの苛立ちでどんどん煮詰まっていく。
育児、家事以外に何もすることがない悲劇・・というか、孤独というか・・。

「隣の青い芝生」に苛立ち疲れきってしまっている5人の母親たち・・、自分にとって1番大切なものは何か?を忘れて、煮詰まり絶望したときに、何が大切なことなのかを見出していきます。
本当に大切なことは失ったりしないと気づけないものなのでしょうか?

ママ友を作るのが悪い・・わけではないけれど、こんな風に煮詰まってしまうなら一人でいたほうがまし・・。と思える1冊。

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森に眠る魚

角田 光代 / 双葉社


by chicohiro | 2009-05-22 23:30 | 小説